風の画家 中島潔 の世界
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春先の日の午後、
所要で、知人の男性宅にいた。
用事が終わり、談笑していて
お湯のみを手にふっと横を向いたら
リビングの本棚に
飾ってある絵に目がとまった。
「あら、あれは……」
「え?」
彼は私の視線をたどる。
「あれって、中島潔さんの……」
振り向いた彼はやっと私が見ているものが
わかった。
「ああ、あれですか。なかじまきよし、さんと
いう方でしたか」
何か思い出し笑いをしながら
立ち上がってそれをもって来ると
私に手渡してくれた。
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「見せていただきます」
ちょっと敬礼をする。
「あら、一枚の絵かと思ったら
何枚かの絵が入っているのですね」
一枚目をそっと開ける。
しっかりとした表紙、
中は12,3枚の透明ファイルが綴じこまれていて
裏表に2枚の絵が差し込まれ、
さながら、画集。
一枚ずつを額に入れることもできる。
いいですね〜、とタメイキをもらしながら
見入る私に
「そんなにいいですか?」
「はい、絵、大好きです。
どんなのでも、私の感性に響けば
もう充分なんです。
この人のはずっと、好きでした」
あら、平安の絵巻みたいなのも
この人って描くんですね〜
源氏物語から、でしょうね。
そうみたいですね
かわいいですよね、なんか、
メルヘンがありますよね〜
一枚、一枚に想像力を
かきたてられます
ちょっと、どれにも
人の生きる哀しみを感じます
幼子の表情が、いたいけなくて
なのにどこか優雅で、薄汚れた絵にも
柔らかな甘さも、のせてあって、
心を心地よい風が、吹き抜けていくような
あと、元気が知らずしらずに出てくるような……
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はぁ
彼の、気のない返事。
そんなに気に入ったのでしたら
それ、さしあげますよ
え? だって……
はは、実はね。
数年前に、マラソンに出ましてね。
長い時間かかって、ゴールしたら
ご褒美だってんで
並んでいたんですよ。
どれでもお好きなものをって
ことでした。
私は、どれにも興味がなくて、迷ったのですが、
これをもらってきました
で、タダだったんですか?
……いえ、係員が
ほんのおこころざし程度のものを、と。
なんかのイベントで、余ったものを
数種類、置いてあったんですよ。
そんなにお好きなら、ほんとにさしあげましょう。
絵、なんてぇモンは、好きな人が持っているのが
一番、いいことですから
私なんぞ、しようもないもん、もらったって
置くところもなくて
ここに置いてあっただけです。
あの……
申し上げにくいですが、その
参考までに、おこころざしっておいくらほど?
っふ、200円です
200円!!
はい、赤い硬貨でなくて
白いのをって、申し訳なさそうに言われたので
でも、一枚じゃあ、いくらなんでもと、
そこは、2枚出して……
ここで二人で吹きだす。
セーターの下の
腕にトリハダ。
え? ほんとにこれ
持って帰っていいのかしら?
話が少しそれたりしながらも、
私は大事にその冊子を
なでたり開けたり
見入ったり。
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そして。
提案。
「あの〜、もし、ほんとにいいのでしたら
なんだか、申しわけないので
そのおこころざしと同じだけで
買わせていただくということにしても
よろしいでしょうか?」
「あっはっは〜、お気の済むように」
私がお財布から白い硬貨を
2枚つまみだすと
屈託なく、手のひらを出された。
紳士だ。
「そんな……
お金なんか、いいですから」と
ありがちな押し付け合いに
ならない。
こちらの言い分を
すんなりと通してくれた。
後味よく、
抱っこしてきた画集は
縦48cm 横24cmの大判。
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ベッドで、うち眺めて、タメイキついて
数日。
今日は、ここに。
『風の画家 中島潔の世界』
(紅葉)
(街の雨)
かあさんの歌
第十九帖 薄雲 雪の日の別れ 明石の君と姫君
(花の夢)
第三十四帖 若菜(上) 蹴鞠の日に (女三の宮)
風の色
少女と犬
第四十七帖 総角(あげまき)
川霧晴れて 匂宮(におうのみや)と中の君
第二十帖 朝顔の姫君
第七帖 紅葉賀(もみじのが)
青海波の舞(せいかいはのまい)
第三十帖 梅枝(うめがえ) 入内(じゅだい)近く
明石の姫君

